※利用規約※ 一読願います 【タイトル】 ミステリーツアー 【登場人物】 ◆大西研介(おおにし・けんすけ) 参加者の1人。 大学生。 東範大学という名門大学に通っている。 真面目な性格で成績は上位。 <その他の情報> 応募理由:現実逃避 <外見> 身長 168センチ 体重 61キロ 年齢 19歳 髪 黒、短髪 ========== ◆松樹冠太郎(まつき・かんたろう) 参加者の1人。 記者。 面白い話や笑える話などを主に扱う。 <その他の情報> 応募理由:記事のネタ集め <外見> 身長 178センチ 体重 73キロ 年齢 31歳 髪 深めの茶髪、短髪 ========== ◆梨野紘一(なしの・こういち) 参加者の1人。 元サラリーマン。 現在は自営業。そこそこ収益をあげている。 紅葉の観光ツアーやミステリーツアーなど、ツアー観光が趣味。 <その他の情報> 応募理由:趣味 <外見> 身長 165センチ 体重 62キロ 年齢 43歳 髪 黒、短髪 ========== ◇島津由希(しまづ・ゆき) 参加者の1人。 大学生。 大西とは別の大学。大学ランクはBクラス。 明るく、少々がさつ。 <その他の情報> 応募理由:好奇心 <外見> 身長 167センチ 体重 59キロ 年齢 19歳 髪 茶、ショート ========== ◇秋宮志穂(あきみや・しほ) 参加者の1人。 銀行員(デスクワーク)。 おしとやかな雰囲気の美人。 <その他の情報> 応募理由:友人の代理参加 <外見> 身長 163センチ 体重 56キロ 年齢 28歳 髪 黒、セミロング ========== ◆千葉卓弥(ちば・たくや) 企画運営者。 何よりもお金が好き。 自信家。 <その他の情報> <外見> 身長 175キロ 体重 67キロ 年齢 35歳 髪 赤、短髪 ========== ◆霧島誠(きりしま・まこと) 千葉の秘書。 秘書としてとても優秀。 物事に対する関心が薄く、仕事を淡々とこなす。 <その他の情報> <外見> 身長 171キロ 体重 64キロ 年齢 26歳 髪 黒、短髪 ========== 【配役とセリフ数】 (L123)大西♂: (L86)松樹♂: (L60)梨野♂: (L117)島津♀: (L52)秋宮♀: (L34)千葉♂: (L28)霧島♂: ========== 【時間】 30〜35分 ==========ここから本編========== =駅前= 大西「この辺り……かな?」 島津「ねぇねぇ。」 大西「え?」 島津「アンタも参加者? ミステリーツアーの。」 大西「は、はい。じゃあ貴方も?」 島津「そう。いやー、先に人が居てよかった。 この手のイベントで1人待機はきついなぁって思ってたから。」 大西「僕も場所が間違ってないと分かって安心しました。」 島津「あたし島津由希(しまづ・ゆき)。アンタは?」 大西「大西研介(おおにし・けんすけ)です。」 島津「見たところ、大学生?」 大西「はい。島津さんも?」 島津「そっ。でもウチじゃ見かけない顔ね。どこ行ってんの?」 大西「東範(とうはん)大学です。」 島津「マジで!? 名門大学じゃん!! こんな所で遊んでていいの?」 大西「それは……。」 松樹「おい、ちょっといいか?」 大西「え?」 島津「なによ。」 松樹「ミステリーツアーの話知らねえか? 窓口に聞いても知らねえって突っぱねられちまってよ。」 大西「あ、それなら僕たち参加者ですよ。」 松樹「マジか! ラッキラッキー! 俺は松樹冠太郎(まつき・かんたろう)。よろしくな。」 島津「島津由希よ。」 大西「大西研介です。」 松樹「予定時刻ギリで焦ったが、なんとかなったぜ。」 島津「こういうのってやっぱ特別なバスがくるもん?」 松樹「多分な。」 大西「あ、あのバスじゃないですか?」 島津「ぽいね。」 霧島「お待たせしました。運転手の霧島と申します。 島津様、大西様、松樹様でよろしいでしょうか?」 大西「はい。」 霧島「バスの中へどうぞ。」 島津「広っ!! トイレも付いてる!!」 松樹「こんな贅沢なバスが来るとは思ってなかったぜ。」 霧島「では出発します。」 == 大西「運転手さん。」 霧島「はい、なんですか?」 大西「このツアーの参加者って何人居るんですか?」 霧島「5名です。目的地に向かう前にもう1ヶ所立ち寄ります。そこで2名乗られる予定です。」 松樹「たった5人かよ。」 島津「まぁこういうツアーだと参加者決まってくるし、しかたないっしょ。」 == 【SE バスの止まる音】 霧島「お待たせしました。運転手の霧島と申します。 梨野様と秋宮様でよろしいでしょうか? どうぞ中へ。」 島津「あ、女の子だ。」 梨野「こんばんは。梨野と申します。よろしく。」 秋宮「秋宮志穂です。よ、よろしくお願いします。」 島津「秋宮さんコッチコッチ! 一緒に座ろ!」 秋宮「は、はい。」 島津「いやーアタシ以外に女の子が居て安心したわ〜。」 秋宮「私も女性の方が居て安心しました。」 松樹「えらい美人だな。」 梨野「だねー。」 霧島「そろそろ消灯します。着くのはおそらく朝方になると思います。 それまでゆっくりお休みになってください。」 大西M「運転手に促され、僕たちは眠りに就いた。 でも、この時は知らなかった。この後に起こる悪夢なんて。」 == 松樹「ん……朝か……?」 梨野「うわあああああああああああ!!」 松樹「どうした!?」 大西「……んぁ?」 島津「(寝起き)……うっさいわねえ……。」 秋宮「どうかしましたか……?」 梨野「う、うんて……うんてん……!」 松樹「落ち着け。なんだ?」 梨野「運転手が……!」 松樹「運転手? ……おいおい冗談だろ。」 大西「どうしたんですか?」 松樹「こっち来んな!!」 大西「え?」 島津「なによ偉そうに。」 松樹「……運転手が死んでんだよ。」 秋宮「そんな……。」 島津「……本当に? 偽物ってことは?」 梨野「そ、そうだ。演出ってことも。」 松樹「素人の俺が見てもヤバイってことが分かる。 おい誰か掛けるものくれ。このまま晒し者じゃあんまりだ。」 大西「は、はい。」 島津「とにかく出ましょ。あれ、開かない……? ウソ……。」 大西「非常扉なら……ふんっ! んっ! 開かない……。」 松樹「……こりゃ閉じ込められたか?」 島津「はぁ!? 冗談じゃないわよ!!」 秋宮「お、落ち着いて下さい。」 梨野「そうだ! バスの中を調べよう! なにか出てくるかもしれない!」 大西「そ、そうですね。」 == 秋宮「あ。」 島津「何かあった?」 秋宮「は、はい。これが……。」 松樹「なんだこれ? 紙切れと包み?」 梨野「えっと…… 『このツアーに参加して頂きありがとうございます。 もっとも早くこの森から脱出した方に豪華賞品をプレゼントいたします。 賞品の詳細は包みを開けてご確認ください。なおこちらはその一部です。』」 大西「中身なんでしょう?」 松樹「開けりゃ分かんだろ。……おいこれ。」 梨野「金の延べ棒……? でも本物かな?」 秋宮「ちょっと貸して頂けますか?」 梨野「はい。」 秋宮「……これは本物です。」 松樹「分かんのか?」 秋宮「私、銀行員なんです。お客様から何度かお預かりした事があるので……。」 梨野「これで一部ってことは他にも金(きん)が……。」 松樹「マジかよ……。」 梨野「でも冗談でここまでやるとは思えないし……それに……。」 松樹「バスから出ねえと始まらねえってか。おい、その金塊貸せ。」 秋宮「どうぞ。」 大西「どうするんですか?」 松樹「これ本物なんだろ? これなら窓割れるかもしれねえじゃん。」 梨野「ちょ、ちょっとストップ!」 松樹「なんだよ?」 梨野「もったいないよ!」 松樹「そんな事言ってる場合かよ。」 秋宮「そのまま持っていきませんか? 脱出した時に証拠として警察に提出出来ますし。」 松樹「それは言えてるな。じゃあアンタが預かっててくれ。」 秋宮「分かりました。」 松樹「おい誰か! 窓を割れそうなモン無えか?」 大西「水筒なら……。」 松樹「頼りねえが素手よりマシか。おい、窓から離れろ。おらああああ!!!」 【SE ガラスの割れる音】 松樹「おっし、割れた。」 島津「まったく、とんでもないツアーだわ。」 大西「ですね……。」 秋宮「こ、怖いです……。」 梨野「大丈夫大丈夫。……多分。」 == 霧島「失礼します。」 千葉「おう、入れ。」 霧島「バスをいつも通りの場所に止めてきました。それと死体も。」 千葉「ごくろうさん。まぁ座れよ。お前もワイン飲むか?」 霧島「私は結構です。それより、モニタ見ないんですか?」 千葉「見たってしょうがないじゃん? 俺参加してねえし。 なぁに心配要らねえさ。俺が練ったプランなんだから。」 霧島「しかし世の中には酔狂な人がいるものですね。」 千葉「この世ですっかり退屈しちまった連中が居るだけのこった。 そんな奴らに俺が刺激を提供して、そのリターンに金をもらうだけ。 需要と供給ってやつだ。お前が最適な森を見つけてくれたおかげだぜ?」 霧島「ありがとうございます。」 千葉「まぁ初期投資は随分掛かっちまったけどな。 お客用にカメラ仕掛けたり、ゲーム盛り上げるために小屋作ったり。 まぁもう回収できたからいいけど。」 霧島「今回はどんな展開になるのでしょうか。」 千葉「お客に楽しんでもらうには 連中にあたふたしてもらわねえと困るんだよ。 なぁに、心配いらねえさ。そのために色々仕込んであるんだからよ。」 == 松樹「くそっ、全然道が分からねえ。」 島津「雑草生え放題って感じ。」 大西「(腕時計を見て)朝の9時とは思えない暗さですし……。」 秋宮「木が光を遮ってしまっているんですね。」 梨野「太陽の場所が分かれば方角が分かるんだけどなぁ……。」 松樹「こんなサバゲーだって最初から知ってりゃ、いろいろ持ってきたのに。」 梨野「普通ミステリーツアーって聞いてこんなサバイバルを思い浮かべる人はいませんって。」 秋宮「はぁ……はぁ……。」 梨野「秋宮さん、大丈夫?」 秋宮「すみません、体力がある方では無いので……。」 松樹「おいおい、まだ30分も歩いてねえぞ?」 梨野「森の中はデコボコしてるから、普段より疲れやすいんだよ。」 島津「あ! あそこ見て!」 大西「小屋?」 松樹「こんな森の中に……。怪しさ満点だな。」 梨野「でも外より安全でしょう。秋宮さんもゆっくり休めるし。」 松樹「しゃあねえ。行くか。」 秋宮「ご面倒をおかけします。」 == 松樹「おじゃましますよっと。」 大西「真新しい小屋ですね。」 島津「ほんとね。最近作られた感じ?」 梨野「だとしたらきっとツアーの施設だね。」 松樹「おい。棚に保存食が入ってるぞ。飲み物も一緒だ。」 梨野「そういえば起きてから何も食べてないや。」 大西「今のうちに食べておきましょう。」 秋宮「……もしかしたら毒が入ってるかもしれませんよ。」 大西「え?」 梨野「可能性はあるね……。」 島津「でも……。」 松樹「あーメンドクせえ。食えば分かんだろ。それ貸せ。」 大西「ど、どうぞ。」 松樹「(モグモグ……) 大丈夫だ。食える。なかなか美味いぞ。ほれ。」 島津「あ、ありがと。」 梨野「そ、そうだ! 皆が参加した理由教えてよ。ここで会ったのも何かの縁ってやつだろうし。」 松樹「じゃあまずアンタから教えてくれよ。」 梨野「私は元々ツアーが好きなんだ。ジャンル問わずね。 このツアーも面白そうだと思ったから参加したんだ。君は?」 松樹「俺は記者やってるんだが、そのネタ集めにな。 適当に情報集めてたらこのツアーが目に入った、それだけだ。」 島津「私もオッサンに近いかな。」 松樹「オッサンとは随分だな。」 島津「だってオッサンじゃん。」 梨野「まぁまぁ。君は?」 大西「僕は……。」 島津「そういやバスに乗る前に聞きそびれたんだっけ。 ほんっと東範大学の学生が何やってんのよ。」 大西「……疲れたからです。」 島津「え?」 大西「成績を上位に保ち続けることに疲れたんです。 口には出さないけど教授も親族も 『東範大学の学生は勉強が出来て当たり前』って目を向けてきます。 そんな状況から少しだけ抜けたかったんです。」 松樹「頭が良いってのも大変だな。」 島津「……ごめん。」 大西「謝らないでください。」 梨野「……そ、そうだ。秋宮さんは? どうしてこのツアーに?」 秋宮「私は、本当は友達が参加するはずだったのですが、 急な予定が入ったみたいで、その代わりに……。」 梨野「代理参加ってやつだね。」 松樹「とんでもない代理参加になっちまったな。」 大西「……これからどうしますか?」 松樹「どうするも何も、この森から脱出するに決まってんだろ。」 大西「そうなんですけど……どうやって?」 島津「適当に進んでたら出れたりしない?」 梨野「それは危険じゃないかな。この森、特徴が無いから迷子になっても気付けないかも。」 秋宮「どうしましょう……。」 松樹「どうするもこうするも無えよ。行くしかねえ。 食料や飲み物を詰めれるだけ詰めていくぞ。 別の小屋があるかは分からねえからな。」 島津「はぁ……それしか無いのね。」 == 千葉「今頃小屋に着いた頃かな。」 霧島「おそらく。モニタ室に照会しますか?」 千葉「いや、いい。めんどい。」 霧島「そうですか。」 千葉「なんかトラブったら連絡よこすだろ。 それが無えってことはいつもどおりって事さ。」 霧島「トラブル?」 千葉「カメラが壊れたりとか、その辺。」 霧島「今のところそういった連絡は入っていません。」 千葉「ならいいんだ。カメラが壊れると連中がうるさいからな。」 == 松樹「……景色が変わってるのかさえ分かんねえ。」 大西「バスと小屋からは真っ直ぐ遠ざかってるはずです。」 梨野「つまり理屈だと森の外に向かってるはずだね。」 島津「森の中じゃ方角なんてアテになんないけど。」 松樹「うげっ!?」 秋宮「ど、どうしましたか?」 松樹「クモの巣が頭にひっついた。ちくしょう。」 【SE 仕掛けの動く音】 松樹「おわっ!?」 秋宮「ひゃっ!?」 大西「大丈夫ですか!?」 松樹「痛って……。悪りい、大丈夫か嬢ちゃん。」 秋宮「はい。なんとか……。」 島津「なんか飛んで来たような……。」 梨野「これは……矢?」 松樹「クモの巣とっぱらった時に、なんか"引いた"感じはしたが……。 やっぱりこのツアー、冗談じゃすまないみたいだぜ。」 秋宮「他にもこんな仕掛けが……?」 松樹「あるって考えるのが自然だろうな。 真っ暗じゃないとはいえ、この森の明るさで仕掛けを見抜くのは無理だろ。」 梨野「じゃ、じゃあどうすれば?」 大西「慎重に行くしか……。」 島津「ゴールも分からないのに慎重にとか……。いつ終わるのよコレ。」 松樹「企画者に言ってくれ。俺は死ぬ気は無え。 生きて帰ってこの企画者を殴る。ぜってー殴る。」 梨野「はは……ははは……。」 大西「梨野さん?」 松樹「おい、どうした?」 梨野「殺される……私達も……ははは……ははは……。」 島津「な、なに……?」 梨野「あの運転手みたいに……ははは……。」 松樹「おい! ……おい!!!」 梨野「は、はいっ!?」 松樹「しっかりしろ!」 梨野「ご、ごめんなさい……。」 島津「まぁこんな状況で普通で居るほうが異常だよね。」 大西「島津さん、落ち着いてるように見えますけど……?」 島津「え? んなわけないじゃん。普段通り振る舞ってるだけ。」 松樹「今後どうなるとも分からん。とっとと森を抜けるぞ。」 == 【SE ドアの開く音】 霧島「失礼します。」 千葉「おう、どうした?」 霧島「ボウガンのトラップが発動したとの報告がありました。」 千葉「思ったより早かったな。誰か死んだか?」 霧島「いえ。矢は木に当たったそうです。」 千葉「それを聞いて安心だ。連中にはまだまだ頑張ってもらわないといけないからな。 とはいえ、その話じゃ怪我人は出てないのか。1人くらい手負いが居た方が盛り上がるんだが。」 霧島「それだとゲームの進行が遅れませんか?」 千葉「なぁ霧島、客どもがカメラを通して見てる光景。それはなんだ?」 霧島「ゲームの進行状況では?」 千葉「それは俺たちの視点。」 霧島「……?」 千葉「正解は『リアルタイムの映画』。」 霧島「映画?」 千葉「そう、映画。 客どもは毎度金を払ってこの映画を見ている。 監督・演出その他諸々俺。 タイトルは常に同じ。でも中身は常に違う。そりゃそうだ。 罠の場所や種類、参加者の人数や性別比……何もかもが違うんだから。 何が起こるか分からない。そんな映画を安全な特等席でワイン片手に見てるわけ。」 霧島「つまり、怪我人が出るのは映画の演出になると。」 千葉「そういうこと。だからクライマックスになったら2、3人くたばってくれた方が面白い。」 霧島「参加者が全滅したらどうしますか?」 千葉「う〜ん……それはそれでアリだな。」 == 梨野「おや?」 松樹「どうした?」 梨野「この辺りの草、踏まれて折れてる。」 島津「けもの道?」 梨野「そうかもしれないね。あてもなく歩くよりはこれに従ったほうがいいかも。」 秋宮「そうですね。」 大西「…………。」 梨野「どうしました? 考え込んで。」 大西「いや……なんのためかなと思いまして。」 梨野「なんのため? 何がだい?」 大西「こんな仕掛けを作る意味です。」 松樹「そんなの考えてる場合かよ。」 島津「そうよ。そんな事考えてトラップ発動させないでよ。」 大西「バスを降りた頃から引っ掛かっていたんです。 個人でやるにはあまりに規模が大きいし、目的もはっきりしません。」 梨野「目的って……金塊を目当てにゲームをさせる事じゃないのかい?」 松樹「あんな現場見せられて金の事考えられっかよ。」 島津「同感……。」 梨野「…………。」 松樹「お、これは……。」 島津「ようやく道らしい所に出たわね。」 秋宮「……みなさん。あれ。」 大西「分かれ道?」 松樹「ようやく道らしい所に出たと思ったら、今度は分かれ道かよ……。」 梨野「二手に分かれる?」 松樹「それをやると、半分は死ぬだろうな。」 梨野「え?」 島津「おっさんは一方が当たりで一方が外れだって言ってんの。」 大西「どうするべきでしょうか……。」 松樹「う〜ん……。」 島津「…………。」 秋宮「うっく……ひっく……。」 梨野「秋宮さん?」 秋宮「どうしてこんな事に……ひっく……。」 島津「秋宮さん代理参加だしね……。」 秋宮「もう……嫌です……!」 【SE 駆け足】 梨野「あ、秋宮さん! 待って!」 松樹「あのバカ! 勝手な行動取りやがって!!」 梨野「追いかけます!!!」 松樹「おい! ……行っちまった。」 大西「ど、どうしましょう!?」 島津「どうするったって……。」 松樹「ちっ……! 俺達はこっちに行くぞ。運よく合流出来るのを信じるしかねえ。」 == 松樹「はぁ……はぁ……。」 島津「ねえ……ちょっと休まない?」 松樹「そうだな……どっこいしょっと。(腕時計を見て)もう1時か。」 大西「バスを出てから4時間経ったんですね。」 島津「2つめの小屋は見当たらないわね。」 大西「そうですね。あれば安全に休めるんですが……。」 松樹「無いもんは仕方ねえ。その場を動かなければトラップは発動しねえだろ。 俺はちょっと寝る。1時間経ったら起こしてくれ。」 大西「分かりました。」 島津「こんな状況ですぐに寝れるもん?」 松樹(いびき) 島津「はやっ!!」 大西「島津さんも休んだほうがいいと思いますよ。」 島津「私は木にもたれるだけで十分。流石におっさんみたいに寝れない。 つーか、この状況でよく寝れるわー。」 大西「ははは……。」 島津「しっかし、つくづく面倒なことに巻き込まれたもんだわ。」 大西「そうですね。あの……。」 島津「なに?」 大西「島津さんはどうしてこのツアーに?」 島津「あれ? 小屋で言わなかったっけ?」 大西「あの時『松樹さんに近い』と言ってましたけど、島津さんは大学生だって。」 島津「あーそういうこと。 私、昔から面白そうなものはとりあえず手を出すタチなの。 このツアーもそんな気持ちで応募しただけ。まさかこんな内容だなんて思ってなかったけど。」 大西「そうだったんですか。」 島津「アンタは小屋で聞いた通りね。」 大西「はい……。」 島津「……ねえ、アンタの学校の話聞かせてよ。」 大西「え?」 島津「ほら無い? 学校の中にある面白スポットとか、癖の強い教授とか。」 大西「そうですね……うちの学食、バイキング方式なんですよ。」 島津「バイキング!? マジで!?」 大西「はい。その中で凄く人気のメニューがあるんです。それは……。」 島津「待って! 当ててみせる! ん〜……ん〜……ハンバーグ! どう!?」 大西「残念、はずれです。」 島津「え〜。じゃあ正解は?」 大西「チキンのハーブグリルです。」 島津「なにそれ。」 大西「鶏肉をグリルしてハーブで味を調えた料理です。」 島津「名前のまんまね。」 大西「はは、そうですね。さっぱりしてて、ご飯にもパンにも合うんですよ。」 島津「へ〜。」 大西「島津さんのところはどうですか?」 島津「うちは普通だね。 つっても自分のとこ以外の学食なんて知らないけど。 でも『懐かしのコロッケ』ってメニューがあるんだ。」 大西「懐かしのコロッケ?」 島津「そう。 別に高級なモン使ってないんだけど、食べてると落ち着くんだわこれが。」 大西「食べてみたいです。」 島津「今度食べに来なよ。」 大西「え? でも外部の人は食べれないんじゃ……?」 島津「大丈夫大丈夫。 うちはそういうの無いから。誰でも利用できる。」 大西「そうなんですか。是非。」 島津「そっちは学生しか使えないの?」 大西「学生証が食堂へのパスを兼ねてますから。 工事の人なども利用しますが、学生証に代わるものを学校からもらってます。」 島津「は〜面倒くさいことしてるのね〜。」 大西「だから学生証を忘れると食堂が使えないんですよ。」 島津「死ぬ! それ確実に死ぬ!」 大西「ははは。」 島津「アンタ、結構面白いじゃん。」 大西「え?」 島津「もっとそういう話を積極的にしていきなよ。」 大西「でも……。」 島津「最初は『名門校のアンタ』に人が集まるかもしれない。 でも最後は『素のアンタ』に惹かれた人間だけ残ってくれるよ。 まあ、私も人のこと言えないけどさ。」 大西「島津さん……。」 島津「うちに遊びに来なよ。サークルの連中に紹介するからさ。面白い奴ら揃ってるよ。」 大西「ありがとうございます。」 == 秋宮「はっ……はっ……。」 梨野「待って!」 秋宮「来ないでください!」 梨野「大丈夫だから。落ち着いて。」 秋宮「はぁ……はぁ……。」 梨野「落ち着いた? ちょっと休もう。」 秋宮「す、すみません。」 梨野「ふぅ……出口はどこなんだろうね。」 秋宮「分かりません……。」 梨野「ところで秋宮さん。」 秋宮「はい、なんでしょうか?」 梨野「秋宮さんは賞品の事どう思ってる?」 秋宮「どう、と言われましても……。」 梨野「……私は正直欲しい。」 秋宮「そ、そうですか?」 梨野「秋宮さんだって欲しくない?」 秋宮「どちらかと言われれば、欲しいですが……。」 梨野「そうか……じゃあ仕方ないね……。」 秋宮「え? あの……ちょっと、梨野さん……きゃ!?」 梨野「『もっとも早くこの森から出た人に……』」 秋宮「やめ……て……苦し……。」 梨野「だから人が減れば……!」 秋宮「離れ……て!!!」 梨野「くっ!?」 秋宮「はぁ……はぁ……。」 梨野「大人しくしててよ。そうすれば痛くしないから……。」 秋宮「い、いや……。」 【SE 駆け足】 梨野「待って! 逃げないで!」 【SE 銃声】 == 島津「なに今の音!? 銃声!?」 大西「もしかして梨野さんたちに何かあったんじゃ!?」 松樹「……なんだ、騒がしいぞお前ら。」 島津「寝てる場合じゃないよ! 銃声が!」 松樹「銃声!? まさかお前ら撃たれたのか!?」 大西「いえ、僕たちはなんともないです。でももしかしたら……。」 松樹「アッチの連中がヤバイってか……。くそっ!」 大西「ど、どうしますか? 引き返して向こうの様子を……?」 松樹「……このまま先に進むぞ。 向こうに罠があることはこれでハッキリした。 ここで引き返すと俺たちもやられかねない。」 大西「…………。」 松樹「学生。言いたい事は分かるが、ここは進むしかない。」 大西「はい……。」 == 松樹「歩きながらでいい。俺が寝てる時に起きた事を話してくれ。」 島津「銃声が聞こえた以外は特に……。」 松樹「人の気配は?」 大西「そういうのも無かったです。」 島津「秋宮さんたちは真逆の道へ進んだから、流石に気配で探るのは……。」 松樹「そうじゃねえ。外から銃を持った奴が送り込まれたとしたら洒落にならん。」 大西「え!?」 松樹「でも大丈夫そうだ。この森は相当広い。 もし送り込むなら大量に人がいる。でも気配や足音無かったんだろ?」 大西「ええ。」 松樹「となりゃ罠が発動したってこった。 だからってアイツらが無事かは分からんが、生き延びてる可能性はある。 追っ手がいたら、確実にやられちまってる。だから心配すんな。」 島津「う、うん……。」 松樹「あー首痛てえ。布団で寝てえよ。」 島津「地べたでイビキ掻いて寝てたじゃん。」 松樹「記者生活してるとな、ああいう寝方も必要なんだよ。」 大西「大変なんですね……。」 松樹「まあな……あぶない!!」 島津「え? きゃっ!?」 【SE ボウガン】 松樹「ぐあっ!?」 島津「おっさん!?」 大西「血が……! 応急処置を……!」 松樹「へっ……腹に穴が空くなんて経験、まず出来ねえよな……。」 大西「喋らないでください!傷口が!」 松樹「結局……どっちの道もハズレだったわけか……。」 島津「これ抜いた方がいい!? 抜くとヤバい!?」 松樹「……落ち着け。話がある。」 島津「落ち着けるわけが!!」 松樹「いいから聞け!」 島津「!!」 松樹「……悪りい、怒ってるわけじゃねえ。 見ての通り、俺は動けそうにない。 だからお前らだけで先に行け。それで救急車呼んで来い。」 大西「松樹さん……。」 松樹「お前らが戻って来るまでは絶対死なねえよ。 言っただろ? 俺は森を出て、こんな事企てたバカ野郎を殴るって。」 島津「……分かった。絶対死なないでよ……?」 松樹「……ああ。」 島津「行こう。」 大西「はい。」 【SE 遠ざかる足音】 松樹「行ったか……ごふっ、がはっ!!! はぁ……はぁ……。あ〜あ、血で服がまっかだぜ……。 これ結構気に入ってたんだがな。まぁ仕方ないか。 やべ……意識が……。やっぱり無理だったか……。」 == 島津「はぁ……はぁ……。」 大西「はぁ……はぁ……。」 島津「体が……!」 大西「島津さん、ずっと走り続けるのは……。」 島津「でも……。」 大西「気持ちは分かります。だからせめて歩いていきませんか?」 島津「……そうね。ごめん。」 大西「謝らないでください。」 島津「でも、出来るだけ急ぐわよ。」 大西「はい。」 == 島津「ん? さっきより明るい……?」 大西「陽が差しこんできてますね。」 島津「てことはもうすぐ出られる……?」 大西「きっとそうですよ! ほらあそこ!」 島津「……出口?」 大西「行きましょう!」 == 大西「ようやく森の外……に……?」 島津「なにこれ……堀?」 大西「橋はかかってるみたいですけど……。」 島津「堀の中は刺の山……泣けるわね。」 大西「別の道を探しましょう。 バスでこの森に入って来たんですから、他に道が必ず……!」 島津「そのために、罠だらけの森の中に帰るの?」 大西「そ、それは……。」 島津「それに悠長な事してる時間は無いわ。」 大西「……分かりました。」 島津「この橋、大丈夫かしら?」 大西「ロープに木板ですからね……。そんなにしっかりしたようにも見えませんし。」 島津「あんた、体重いくつ?」 大西「え? えっと……確か61キロ。」 島津「私が59キロ……。私が行く。」 大西「ちょっと待ってください!」 島津「なによ?」 大西「橋が不安定なのは明らかです。ここは僕が……。」 島津「2人同時に渡るのは危険すぎる。 なら1人だけ橋を渡ってみるしかない。だったら軽い方が行くべきでしょ?」 大西「それはそうですけど……でも……。」 島津「大丈夫。私運動神経だけは自慢だから。 だからアンタはそこで見守ってて。仲間が居るってだけで気持ち楽だから。」 大西「……分かりました。」 == 島津「ロープのきしむ音って心臓に悪いわね……。」 大西「(呼びかける)大丈夫ですか〜?」 島津「大丈夫大丈夫。」 【SE ロープのきしむ音】 大西「ロープが……! 島津さん!! 引き返して!!」 島津「え? きゃあ!?」 大西「島津さん!!」 島津「うわっ……と……。」 大西「手を伸ばして!!!」 島津「くっ!」 大西「……だ、大丈夫ですか?」 島津「な、なんとか……。」 大西「今、引きあげますから……くっ……ふんっ……!」 島津「……だ、大丈夫?」 大西「大丈夫……です……。」 島津(少しずつ下がってる……このままだと2人とも……!) 大西「ふんっ……!」 島津「……ねえ。」 大西「な、なんですか?」 島津「私の分までよろしく。」 大西「え?」 島津(手を自ら離し落下) 大西「島津さん!? そんな……そんな……。 なんで……なんで自分から落ちたの……僕のせい? 僕が引き上げられなかったから……? 僕のせいで……僕が殺した……僕が……。 僕のせいで僕のせいで僕のせいで僕のせいで僕のせいで僕のせいで!!! …………。 ごめんね、島津さん。1人じゃ寂しいよね。僕も、今すぐ、いくから……。」 【SE 落ちる音】 == == 【SE ノックの音】 千葉「おう入れ。」 霧島「失礼します。ゲームの結果を報告します。」 千葉「どうだった?」 霧島「"参加者"は全員死亡しました。うち1人は自殺です。」 千葉「自殺は初めてだな。お客どもも初めてのケースが見れて満足だろ。ごくろうさん。下がって良いぞ。」 霧島「失礼しました。」 【SE 扉の開く音】 千葉「そっかー全員死亡かー。」 【SE ノック】 千葉「入れ。いやー良い結果に終わったな、秋宮。いや、黒瀬って呼んだ方がいいか?」 秋宮「どっちでもいいわ。それより、約束のものを。」 千葉「もうちょっとゲームの余韻を楽しもうぜ。」 秋宮「私は金のためにやってるのよ。貴方と同じ。」 千葉「やれやれ。ほらよ。現ナマだ。」 秋宮「……確かに。」 千葉「でも俺のアドバイスは使えただろ? 『おしとやかな女作戦』」 秋宮「それは否定しないわ。」 千葉「男ってのは大抵そういう女に弱いもんだ。1人見事に引っ掛かったみたいだし。」 秋宮「……貴方はそうでもなさそうね。」 千葉「俺は酒よりタバコより女より、金が好き。金が恋人で愛人さ。」 秋宮「私も同じよ。貴方と同じ発想なのがムカつくけど。」 千葉「ヒドイな。そんなこと言われたら俺だって傷つくぜ?」 秋宮「心にもないことを。それにコッチはその作戦で死にかけたのよ?」 千葉「お前が本気を出せばあんな奴余裕だろ?」 秋宮「カメラが無かったらとっくにそうしてたわ。 でも出来ないんじゃ罠に嵌めるしかないでしょ?」 千葉「おお怖い。頭を撃ち抜かれてご臨終とはな。南無南無。」 秋宮「死者を敬う気持ちなんてないくせに。」 千葉「はっはっは。まあな。それと、ちゃんと金塊回収したんだろうな?」 秋宮「あんた、カメラみてなかったの?」 千葉「俺が見るわけねえだろ。」 秋宮「ちゃんと回収したわ。貴方の秘書にもう返却済み。」 千葉「OKOK。次の参加者が集まったらまた呼ぶから。そん時はよろしく。」 秋宮「ええ。さよなら。」 【SE 扉が閉まる音】 千葉「さ〜て、次はどんな奴らが集まるかな。」 完 ------------------------------ 作者:日陰 なにかあればこちらまで。 voice_act_scenario☆yahoo.co.jp (☆を@に変えてください) ※この台本は予告なく改変、削除する可能性があります。 サイト掲載日:H24年5月19日 もどる