※利用規約※ 一読願います 【タイトル】 ねじのゆめ ==========ここから本文========== 僕はネジ。 一応名前はある。 でもアルファベットと数字が並んでるだけだから、 なんだか味気なくて好きじゃない。 とある田舎の工場で作られた僕たちは、 都会へと運ばれて、色んなものを支える仕事をする。 荷車(にぐるま)に乗るまでの数日間、僕は仲間と語りあった。 都会に出たら大きな家を支えたい。 立派な家具を固定する仕事がしたい。 街灯や看板を支える仕事はやりがいがある。 お互いに色んな夢を抱えながら、僕たちは出発の時を迎えた。 == 荷車で都会へと向かう僕たち。 その途中、予想外な出来事が起きた。 ガタッと、荷車に大きな衝撃が走る。 その衝撃で、僕だけ外に落ちてしまった。 自分の力で歩けない僕は、どうしようもなかった。 車に轢かれたり、人に蹴られたり、 雨に打たれたりという日々が続く。 ネジだから痛くは無かったけれど、なんだか寂しかった。 == そんなある日、僕の近くをおじいさんが通りかかる。 「お、こんなところに丁度いいネジがあるじゃないか。」 おじいさんは僕を拾い上げると、嬉しそうに言った。 けれど新品の仲間たちに比べると、もう、どうしようもない姿だった。 「おじいさん、僕より仲間のほうがいい仕事をすると思うよ。」 するとおじいさんはこう答えた。 「お前さんはたしかに売りもんにはならんだろうな。 でも家(うち)の椅子を直すには十分だ。どうだ?うちに来ないか?」 僕の返事は決まっていた。 == レンガ作りの、小さな家。 その家の中にある、小さな椅子。 僕は、その椅子の足を支えている。 あのまま都会に運ばれていたら 大きな家を支えたり、立派な家具を固定できたかもしれない。 でも、おじいさんは、僕も椅子も大事にしてくれる。 最初の夢とは違うけど、こういうのも悪くないかな。 それに、おじいさんは僕に『フィクス』という名前をくれた。 これが一番嬉しかった。 僕はフィクス。 今日も明日(あした)もこれからも、支え続ける。 完 ------------------------------ 作者:日陰 なにかあればこちらまで。 voice_act_scenario☆yahoo.co.jp (☆を@に変えてください) ※この台本は予告なく改変、削除する可能性があります。 サイト掲載日:H24年12月23日 もどる